宅建 講座 体験講義相続 ~相続人・相続分・遺留分~

この記事では、権利関係(民法)の「相続」をテーマにした体験講義の内容をお届けします。亡くなったAさんの500万円のへそくりはどうなるのか、という設例から始まり、単純承認・限定承認・放棄という相続の流れ、法定相続人の範囲と順位、相続分の割合、相続の承認・放棄のルール、遺留分、配偶者の居住の権利、そして遺言の基礎知識までを講師が順に解説していきます。

 

 

1. 相続とは ― 設例で考える
2. 相続の流れ ― 単純承認・限定承認・放棄
3. 誰が相続人となるか ― 順位・代襲相続・同時死亡の推定
4. 相続分 ― 組み合わせで決まる割合
5. 相続の承認・放棄 ― 3つのルール
6. 遺留分 ― 兄弟姉妹にはない
7. 配偶者の居住の権利 ― 短期居住権と配偶者居住権
8. 遺言 ― 誰ができるか・効力・撤回
目次
講義の概要

相続とは ― 設例で考える

テキスト128ページ、2-5「契約の終了段階での学習事項」の1番「相続」に入ります。まず設例です。ある日Aさんは事故にあい、亡くなってしまいました。その後、Aさんの500万円のへそくりが出てきました。この500万円はいったいどのようにしたらよいのでしょうか。Aさんがせっかく一生懸命ためたものですから、Aさんと一緒に棺に入れてあげるべきだと考えることもできます。しかし、亡くなった人は、自分の財産は自分の死後、身近な者の役に立ててほしいと願うのが普通です。そこで法は、死んだ人の財産を一定の者に譲渡するものとしました。これを相続といいます。そしてここに、①誰が、②どれくらい、③どのような手順によって財産がもらえるかを規定しました。結論としては、Aさんに妻と子がいる場合、相続人たる妻と子が相続を放棄しなければ、それぞれ250万円ずつもらえることになります。

ポイント:相続は、死んだ人の財産を一定の者に譲渡する制度。「①誰が ②どれくらい ③どのような手順で」もらえるかが民法に規定されている。

相続の流れ ― 単純承認・限定承認・放棄

129ページ、相続の流れを見ていきましょう。Aさんが亡くなったら、相続人となりうる者は、Aさんの死亡を知ったときから3カ月以内に、単純承認・限定承認・放棄をしなければなりません。Aさんが亡くなったときからではありません。いつ亡くなったかは分からないこともあるからです。個別に見ていきます。まず単純承認を選択した場合。「単純」ですから、Aさんのプラス財産もマイナス財産(借金)もすべて承継します。そのうえで、誰が相続人になるか、その相続人がどのくらい財産をもらえるのかが民法により決定され、実際に分配して終了となります。何も申し出なかった場合には、単純承認したものとして扱われます

次に限定承認。これは少し変わった制度で、相続人は相続によって得たプラス財産の範囲内でのみAさんの借金を弁済すればよいとされています。相続人にとって虫のいい制度ですので、相続人全員が共同して行わなければなりません。最後に放棄。プラスもマイナスも引き継がないという選択で、そのまま終了という流れになります。

ポイント:相続人は「死亡を知ったときから3カ月以内」に単純承認・限定承認・放棄を選ぶ。何も申し出なければ単純承認として扱われる。

誰が相続人となるか ― 順位・代襲相続・同時死亡の推定

130ページ、誰が相続人となるのかを見ていきましょう。被相続人、つまり亡くなった人を中心に、順番に確認します。まず①一方の配偶者(夫もしくは妻)がいれば、常に相続人となります。夫婦は共に協力し合って財産を築くからです。なお、ここに内縁関係にある夫または妻は含まれません。相続は重要なことゆえ、誰が相続人かは戸籍によって明確になることが望ましいからです。

問題は、この配偶者以外に誰が相続人になるかです。②まず、子供が相続人となります。ここの子供には養子・胎児・非嫡出子も含まれます。子供が死んでいた場合には、その子供(孫)が相続人となります。これを代襲相続といい、代襲相続は子供が相続を放棄した場合には生じません。子供がいないときは直系尊属(親・祖父母)が、子供・直系尊属がいないときは兄弟姉妹が相続人となります。おじ・おばが相続人となることはありません。③どちらが先に死亡したかわからない場合は、同時に死亡したものとされ、相続の問題は生じません。これを同時死亡の推定といいます。

ポイント:配偶者は常に相続人。それ以外は子供→直系尊属→兄弟姉妹の順位。代襲相続は、子供が相続を放棄した場合には生じない。

相続分 ― 組み合わせで決まる割合

131ページの真ん中あたり、相続分です。各相続人はどれくらい財産をもらえるのか。テキストでは重要度★5、10年間の出題率3/12とされている重要テーマです。最初に配偶者と子供のパターンでは、配偶者が1/2、残りの1/2を子供がもらい、子供は平等に分けます。この子供には養子・胎児・非嫡出子を含みます。次に配偶者と直系尊属では、配偶者が2/3、直系尊属が1/3で、直系尊属はやはり平等に分けます。最後に配偶者と兄弟姉妹の場合には、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4となります。兄弟姉妹は平等に分けますが、片親が違う兄弟姉妹は他の1/2となります。理由は、相続人の組み合わせにより、被相続人との近さの程度が異なるので、相続分もその組み合わせにより異なるということです。この数字はしっかり頭に入れておいてください。

ポイント:相続分は「配偶者と子供=1/2ずつ」「配偶者と直系尊属=2/3と1/3」「配偶者と兄弟姉妹=3/4と1/4」。片親が違う兄弟姉妹は他の1/2。

相続の承認・放棄 ― 3つのルール

同じく131ページの一番下、相続の承認・放棄です。先ほど相続の流れでも出てきた部分ですが、ここで3つのルールを整理します。①相続の承認・放棄は、相続人が「相続の開始を知った時」から「3カ月以内」にしなければなりません。なお、相続開始前に放棄をすることはできません。②相続の承認・放棄の取消は原則としてできません。③相続人が数人いるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同でしなければなりません。

なお、テキストには「ライバルに差をつける 発展知識」として、共同相続された普通預金、通常貯金および定期貯金債権は、相続開始と同時に当然に分割されず、遺産分割の対象になる、という点も紹介されています。承認・放棄のルールとあわせて確認しておきましょう。

ポイント:起算点は「相続の開始を知った時」から3カ月以内。相続開始前の放棄は不可、承認・放棄の取消も原則不可、限定承認は全員共同。

遺留分 ― 兄弟姉妹にはない

132ページ、その他の重要事項として遺留分を見ていきましょう。どんなことか。例えば夫が亡くなり、財産がすべて他人に遺贈されると、残された妻子は生活に困ります。そこで、一定の相続人に必ず残される一定の割合を遺留分といいます。なお、相続開始前でも、家庭裁判所の許可を受ければ遺留分を放棄することができます。遺留分を放棄しても相続する権利は失いません。

では、誰に遺留分があるのか。一定の相続人とは、①配偶者・子・直系尊属を指します。②兄弟姉妹には遺留分はありません。ここは重要です。割合は、本来受けるはずであった相続財産に対する割合で、①直系尊属のみが相続人の場合は相続財産の1/3、②その他の場合は相続財産の1/2です。遺留分を計算するには、まず通常の相続財産を計算し、計算した後に1/3または1/2を掛けます。いきなり掛けないよう注意してください。遺留分が侵害された場合は、①相続を開始しても、遺留分を害する被相続人の処分が当然に無効になるのではなく、有効です。②遺留分を侵害された者は、贈与や遺贈を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができます(遺留分侵害額請求権)。

ポイント:遺留分があるのは配偶者・子・直系尊属のみ(兄弟姉妹にはない)。割合は直系尊属のみなら相続財産の1/3、その他は1/2。侵害されても処分は有効で、金銭を請求できる(遺留分侵害額請求権)。

配偶者の居住の権利 ― 短期居住権と配偶者居住権

続いて132ページ、配偶者の居住の権利です。趣旨から見ていきましょう。居住建物の所有権を相続すれば、配偶者相続人はそこに住み続けることができます。しかし、それを相続するためには、場合によっては現金や預貯金を受け取ることができず、その後の生活に困ることがあるため、配偶者の居住の権利が保証されています。2つのパターンがあります。①配偶者短期居住権。配偶者が被相続人の財産の建物に相続開始時点で無償で居住していた場合には、6カ月間は、無条件かつ無償で住み続けることができるとされています。

配偶者居住権。被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、(1)遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき、(2)配偶者居住権が遺贈(遺言により無償で贈与されること)の目的とされたとき、のいずれかに該当するときは、その居住建物の全部について無償で使用及び収益をする権利(配偶者居住権)を取得します。この配偶者居住権は、相続開始により当然発生する配偶者短期居住権とは異なり、遺贈または遺産分割によって取得させる必要があります。さらには、裁判所の審判により取得する場合もあります。また、存続期間は原則として配偶者の終身の間とされていますが、遺言や遺産分割の定めによって、より短い期間とすることも可能です。

ポイント:配偶者短期居住権は相続開始により当然発生し、6カ月間は無条件かつ無償。配偶者居住権は遺贈または遺産分割(裁判所の審判の場合も)により取得し、存続期間は原則として終身。

遺言 ― 誰ができるか・効力・撤回

133ページ、遺言です。どんなことかというと、死んでいく人の意思を尊重して、遺言者の死後における財産処分を認める制度です。誰がなし得るか。①遺言能力のある者は当然できます。②制限行為能力者についても、(1)未成年者は満15歳以上ならOKで、法定代理人の同意は不要です。(2)被保佐人・被補助人は単独で有効に遺言ができます。(3)成年被後見人は、本心に復したときに医師2人以上の立会いの下で有効な遺言ができます。方式は、後で争いになることが多いので、一定の方式に従わなければならないものとされます。効力は遺言者の死亡の時から生じ、撤回はいつでもすることができます。

最後に134ページ、事例問題の解き方です。相続の問題では、規定の内容だけでなく、実際の計算問題が出ることもあります。まず、問題文をしっかり読み、死亡・放棄等の条件をすべて書き入れた家系図を作成することが第一歩です。この事例問題については、みなさんの方でしっかりと復習をしておいてください。

ポイント:遺言は満15歳以上なら法定代理人の同意なしで可能。効力は死亡の時から生じ、撤回はいつでもできる。計算問題は家系図を書いて条件を整理する。

講師コメント

相続分の計算は具体的な数値を使った問題が出題されます。配偶者と子・直系尊属・兄弟姉妹の割合を表で整理し、代襲相続や遺留分との関係も押さえましょう。

宅建士講座 窪田義幸
相続人は配偶者+血族相続人(子供→直系尊属→兄弟姉妹)の順位制
法定相続分は相続人の組み合わせで異なる(1/2・1/3・1/4の表を暗記)
遺留分は兄弟姉妹以外の相続人(配偶者・子・直系尊属)に認められる
遺言は満15歳以上なら法定代理人の同意なしででき、いつでも撤回できる
この講義のまとめ
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